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アメリカン・カルチャーを知る英語講座

Updated every Monday, 更新日:11月1日

ジャーナリスト 西森マリー先生

西森先生
西森先生のプロフィール
日本ではほとんど知られていないもう一つのアメリカから情報発信するジャーナリスト、西森マリーさん。背景を知れば、英語もなっとく。マリーさんから、もう一つのアメリカとアメリカ英語の背景を学ぼう!


アメリカン・カルチャーを知る英語講座 31
アメリカ大統領選3〜投票者への脅し
The U.S. presidential election - voter intimidatin & voter suppression
 

先々週から3回に渡って、アメリカの大統領選に関する話題をお届けしています。


今週は、アメリカにおけるvoter intimidation(投票者への脅し)、 voter suppression(投票者に対する抑圧)に関してお届けしましょう。

皆さんの多くはアメリカは「自由・平等の国」だと信じていらっしゃるのだと思いますが、アメリカ版アパルトヘイトと呼ばれる黒人差別「Jim Crow」は現代のアメリカでも根強く生きています。*脚注1)

2000年の大統領選でフロリダ州が有色人種(9割方が民主党支持者)の投票権をシステマティックに奪った話*脚注2)はBBCのドキュメンタリーやマイケル・ムーア氏の本や映画でお馴染みですが、このフロリダの選挙の大失敗(the Florida election fiasco)は過去のことだと思ったら大間違い!

ミシガンの共和党選挙事務所代表者ジョン・パパジョージ氏が公の場で

If we do not suppress the Detroit vote, we're going to have a tough time in this election.
「デトロイト(住人の8割が黒人)の票を抑圧しないと、今回の選挙は苦しい戦いになる」

と発言していますが、共和党と民主党のどちらが勝つか予測できない「激戦州」であるlight blue/purple/pink statesの多くで共和党の人々が黒人票抑圧のために画策しているのです。

※共和党(ブッシュ)よりが赤い州、民主党(ケリー)よりが青い州

まず、フロリダ州ですが、8月の予備選で共和党の投票立会人が有色人種の投票者にIDの提示を求めて投票者を威圧した事件が起こりました。

フロリダ州では有権者登録をしている投票者はIDなしでも投票ができるのですが、有色人種の多く(つまり移民や黒人)は選挙の経験が浅いためこの事実を知らないので、IDを持参していないと投票できないと勘違いしてしまった人がどれだけいたことか!

コロラド州や、アリゾナ州、サウス・ダコタ州、オハイオ州、ネバダ州などでも共和党の投票立会人が必要もないのに運転免許証の提示を求めたり、「過去に逮捕されたことがあるか/家賃を滞納したことがあるか」と尋ねて有色人種の投票者を威嚇する、という事件が起きています。

こうした投票者への脅しや抑圧に関し、全米最大の労働組合AFL-CIO(米国労働総同盟・産別会議)のネバダ支部で投票権擁護のために闘っているユベンティノ・カマレーナ氏はこう言っています。

The people have been thinking what happened in Florida couldn't happen in Nevada. Now, we're seeing little tactics here and little tactics there. There are all kinds of ways to confuse a person so bad that he takes it to his heart that it's so difficult, and I'm doing it for what?
「フロリダで起きたことはネバダでは起きるはずがないとみんな思ってますが、現在あちこちで様々な画策が繰り広げられています。人々(有色人種たち)をひどく困惑させ、こんなに大変な思いをしてまで投票する価値はないだろう、と痛感させる手口はいくらでもありますから」


投票者に対する抑圧は投票所だけで起きるものではありません。フロリダ州では、今年の夏アメリカ国籍を獲得した人々に与えられた有権者登録用紙の所属党の部分が既に共和党の欄にチェック・マークがついているものだった、という事件が起きています。

オレゴン州やネバダ州では、共和党全国委員会が資金を提供している有権者登録を促進するための団体の職員が、

only accept Republican registration forms
「共和党に登録した人々の登録用紙のみを受理せよ」

と指示された、と発言したり、元職員たちが、

We caught her taking Democrats out of my pile, handed them to her assistant and he ripped them up right in front of us.
「彼女(上司)が民主党に登録した人達の登録用紙を抜き出してアシスタントに渡し、アシスタントがそれらを僕たちの目の前で破り捨てました」

と証言し、問題になっています。

ニュー・メキシコ州では、ネイティブ・アメリカン(マジョリティが民主党派)のためのクリニック(病院)での有権者登録が今度の選挙では禁じられてしまいました。

理由は、「連邦政府の持ち物だから」ということですが、これに関しワシントン・ポスト紙は

the federal government encourages registration on military bases, where voters traditionally have favored Republicans.
「連邦政府は伝統的に共和党支持者が多い(クリニックと同じように連邦政府の所有地である)軍隊の基地での有権者登録は奨励している」

と記し、共和党政権のダブル・スタンダード(二重の基準)を指摘しています。
今年は有権者の8割が電子投票機を使って票を投じることになっていますが、これらの投票機の製造会社のほとんどが共和党と深いつながりがあることも忘れてはいけませんよね。

投票機メーカーの最大手DieboldCEOは去年の8月、ブッシュ/チェイニーのための資金調達イベントを主催し、その招待状に

I am committed to helping Ohio deliver its electoral votes to the president.
「私はオハイオ州の選挙人団の票を大統領に与えるために努力すると確約します」

と書いています。
Dieboldの投票機に不正工作をすることが簡単であることを暴いた、Indymediaという報道機関の本部のコンピュータがFBIに押収された事件もご存じの方もいるかもしれませんね。


大手のメディアは全て共和党寄りで、選挙直前に多くの地域で反ケリー番組が放映されることになっているので、投票者への脅しや抑圧はお茶の間にまで押し寄せているわけです。*脚注3)

「アメリカの市民団体が国連に国際監視団を派遣するように要請した」というニュースも流れていますが、11月2日の大統領選は厳しい目で環視をしないと影でどんなことが行われているか分かったもんじゃない、という感じですよね。


脚注
*1.Jim Crow(ジム・クロウ)
20世紀のアメリカ南部では、バス・レストランなど公共の場所で人種分離制度が実施されていました。これら南部諸州の人種差別法や、転じて黒人差別自体を総称して「Jim Crow」と呼ばれています。

*2.
ブッシュ大統領の弟であるフロリダ州知事ジェブ・ブッシュが、2000年の大統領選の前に57,700人の「前科者」のブラックリストを作り、彼らの投票権を剥奪しました。しかし、このリストには前科者と同姓同名の黒人、前科者の名前と似ている名前の黒人、前科者と誕生日が同じというだけの黒人も載っていたことが後に暴露されたのです。

ジェブ・ブッシュのこの政策はvoter purge(投票者浄化)とかethnic purge(少数民族浄化)という名前がつけられ、BBCのドキュメンタリーなどで大々的に報道されました。

この過程を詳しく知りたい方はBBCのリポーターGreg Palat氏のサイトをご覧ください。

*3.アメリカの3大ネットワークと共和党とのつながりについて
ABCの親会社ディズニーは、フロリダにあるディズニー・ワールドが、ジェブ・ブッシュ知事の政権下で、税制上の特別待遇を受けています。

NBCの親会社GEは電力会社なので石油業界と深いつながりのあるブッシュ政権を強く指示しています。

CBSの親会社ViacomCEOも公の場でブッシュ支持を表明しています。
3回目のディベートの司会(大統領候補への質問は全て司会者の一存に任されました)を務めたボブ・シーファー氏はテキサス出身で、ブッシュとはゴルフ仲間。彼の弟は2001年にブッシュに任命されてオーストラリア大使になり、イラク侵略戦争にオーストラリアが加勢するように尽力しました。

関連サイト
Indymediaグローバル版(英語)
Indymedia日本版(日本語)

参考サイト
IDの提示を求めて投票者を威圧した事件について(英語)
フロリダ州での投票者に対する抑圧について(英語)
ジョン・パパジョージ氏の発言について(英語)
ニュー・メキシコ州で、クリニックでの有権者登録禁止について(英語)
電子投票機について(英語)
投票についての体験談(英語)
電子投票について(英語)
オハイオ州での有色人種差別について(英語)

共和党派のみを登録する選挙登録詐欺について(英語)
http://www.motherjones.com/news/dailymojo/2004/11/10_502.html
http://www.post-gazette.com/pg/pp/04296/399788.stm

FBIにより、Indymediaのコンピュータサーバーが押収された事件について(日本語)
http://japan.indymedia.org/feature/display/1774/index.php
http://hotwired.goo.ne.jp/news/culture/story/20041020205.html

ジム・クロウ法の成立(日本語)
ジム・クロウについて(日本語)
ジム・クロウ誕生の背景 (日本語)

ボキャブラリー
suppression:抑圧、抑制、鎮圧
intimidation:脅し、脅迫、威嚇
fiasco:大失敗、大失態
vote:票、投票権、投票する
Republican:共和党、共和党支持者、共和党の
tactic:戦術、画策、方策
the federal government:連邦政府
commit:約束する、誓う、〜を犯す、委任する
primary:予備選、主要な、初期の
registered voters:有権者登録をしている投票者
voter registration forms:有権者登録用紙
Party Affiliation:所属党
electronic voting machines:電子投票機
fund raiser:資金調達イベント、資金調達者、募金キャンペーン
Anti-Kerry program:反ケリー番組
international observers:国際監視団
curbing black vote:黒人票抑圧
poll watchers:投票立会人 【関連】poll:投票、投票所、世論調査、投票する

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